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繋がらないワタシ

   『娘役』、片桐とバズーカ

 宝塚歌劇団における”娘役”に焦点をあてた宝塚小説第二弾

 宝塚ファンのヤクザをエッセンスに、宝塚歌劇団における娘役を描く

 

 この作品で魅力は何といっても、娘役ほたる視点から語られる娘役の苦労とそんなほたるが抱く憧れの先輩薔薇木への想いだ。

 

前作『男役』では

「(前略)私は男役の芸を極めるために人生のすべてを捧げてきたんですよ。(後略)」

『男役』p.103

 というような苦悩が描かれるが同じように本作いおいても

(前略)娘役は可愛い女を演じるのではなく、素から可愛くなることを追求することが仕事なのだ。(後略)

『娘役』p.72

 に従って髪型やアクセサリーに所作までもが追及することを強いられていることを示す。

加えて本作には宝塚歌劇団特有のコンビ愛についても筆致確かに描かれる。

熾烈な世界だからこそ生まれる絆の魅力は前作『男役』にも劣らない。

薔薇木とレオンのコンビがうまく見えた時のほたるの心理描写は必見だ、河を隔ているがゆえに何もできずに見ることしかできない、そしてそれが最終的に物語冒頭へと還ってきたときは、本当に心地がいい。

 

ヤクザ要素とタカラヅカ要素の融合度合いは、前作のファントムさんとの融合具合と比べれば劣ると感じたものの、登場人物たちが本当に在籍しているかのような描きっぷりは素晴らしく、続く『銀橋』への期待と中山作品の面白さを感じた。

 
あとがき

私自身、宝塚大劇場にはがたびたび通っているので、その視点からもニヤニヤと楽しんだ、p.141のオタク感もリアルで笑ってしまった。